富山市医師会について

令和2年度富山市医師会事業計画

令和2年度富山市医師会事業計画

 国では2040年の医療提供体制の構築に向けて地域医療構想、医師の働き方改革、医師の偏在対策を三位一体で推進していく方針が示されています。特に2024年の医師の働き方改革は、救急医療体制に大きな影響をもたらすことになります。富山市医師会が担う初期救急を含め、持続可能な救急医療体制に向けた見直しが急務となっています。また、地域包括ケアシステムの構築においては一層の病診連携を進めると共に、多職種との連携を図りながら在宅医療の推進、医療介護連携を進めていくものであります。
 少子高齢化が進み、富山市においても既に人口減少が始まっています。特に年少人口、生産年齢人口の減少が顕著となっています。その中で医療需要は2025年を、介護需要も2030年をピークに減少に向かう事が予測されています。
 この様な背景から、富山市医師会の他の事業にも大きな影響を及ぼすことが懸念されます。看護専門学校では学生の確保が難しくなり、今後も少子化が進む事を前提とした運営を検討する時期が到来しています。また健診事業は概ね順調に推移していますが、臨床検査事業において民間検査センターとの競合や診療報酬改定による保険点数の引き下げに加え、医療需要の減少が顕在化してくるものと推察されます。このためこれからの10年間は医師会だけでなく会員医療機関も大きな変革にさらされることになります。これらの事業を進める上においても、開業医・勤務医の如何を問わず会員の理解と協力が前提となります。
 日本医師会でも組織率の向上に向けた努力を続けていますが、何よりも当医師会を会員にとって魅力あるものにしていくことが不可欠であり、今期より会員支援を担う専門の職員を配置するなど富山市医師会も会員と共にこの厳しい医療環境を乗り切る体制の構築を目指してまいります。また、会員にとって存在意義が問われている事業については縮小・再編なども含めて、運営が順調に推移しているこの時期に当医師会の事業のありかたを再検討すべきと考えます。
 富山市医師会として地域住民の健康を守る公的責任を担い会員医療機関の円滑な運営や個々の会員の活動を支えると共に、医師会で働く職員の雇用にも配慮しながら事業展開を進めていくことが重要となります。

1.医療制度改革への監視と提言

 我が国ではすべての国民がいつでも、どこでも平等に医療機関にかかり、医療技術の進歩を享受できる「国民皆保険」および「フリーアクセス」という仕組みを採っている。その結果、国民の健康寿命を世界トップレベルにまで押し上げ、WHOでも医療の質、平等性から我が国の医療制度は世界一位と目されるまでになっている。国民の健康を支え、国民が安心して生活を送るための基盤として何としてもその仕組みを堅持していかなければならないと考える。
 しかしながら、我が国の国民医療費は、過去10年で平均2.4%のペースで増加し、2018年は42.6兆円規模となり、2017年より0.4兆円、0.8%の増となっている。その増加要因は、後期高齢者の増加と医療の高度化による。とりわけ老人医療費は医療費の約1/3を占め、その増加率は年1.1%で医療費増加の最大の要因となっている。医療保険財政が厳しい状況となり、「経済・財政再生計画」では、財政健全化を達成するために社会保障関係費の伸びを5,000億円以下に抑えることが求められ、高齢化による増加分等々に収めることを目指すとされている。
 令和2年度は診療報酬改定の年にあたり、本年1月15日に厚生労働大臣より諮問書と骨子が示された。国民医療費の推移より今年はマイナス改定が必要とされ、全体では-0.46%、本体は+0.55%(医科が+0.53%)、薬価等が-1.0%である。予算案では実質5,900億円の増だが、自然増が5,300億円で、今回の診療報酬改定による増はわずか500億円である。これは2012年を100とすると2018年の賃金指数は103、消費者物価指数は105の増加率であるが、診療報酬本体は102弱と賃金、物価の増加率に届いていない。医療従事者の給与は診療報酬によるもので、労働者の給与を上げて景気対策を行うというアベノミクスから医療従事者が取り残されてしまう形になっている。
 また消費税は、2019年10月に税率が10%に変更された。社会保険診療に係わる消費税は政策的な配慮に基づき非課税である一方、診療を行うための薬剤や設備には消費税を支払うという医療機関に不合理な税負担をもたらしている。不合理かつ不透明な制度は根本的に見直されていない。問題の解決には日本医師会が提唱する控除対象外消費税が発生しない仕組みに改めることが必要である。診療報酬改定、消費税共に医療機関、医療従事者に負担をかける方向となっている。
 地域医療構想は2025年に団塊の世代が75歳以上となる超高齢社会を迎えるにあたり医療需要が増大し、将来に渡り持続可能な、効率的で質の高い医療体制の構築が必要となるために策定された。2025年の医療需要を踏まえた必要病床数の推計、目指すべき医療提供体制を実現するための施策の方向性等をまとめることとしている。二次医療圏を基本とし、救急、災害、へき地、周産期等の医療供給体制を整備する。厚生労働省で定められた全国統一の計算式により高度急性期、急性期、回復期、慢性期の必要病床、在宅医療等の必要量を推測するものであるが、富山県では病床数を機械的に当てはめるのではなく医療介護関係者、住民などが医療需要の変化の状況を共有し、目指すべき医療供給体制の実現に向けて検討を行うとしている。高度急性期、急性期、回復期は2025年の年齢別人口をもとに医療資源投入量し、慢性期在宅医療は、入院の必要性が比較的低い入院患者は在宅医療で対応する。富山県では急性期が多く、回復期の少ないことが特徴となっている。在宅医療は2025年までに4,700人が不足すると推定され、さらに推進していく必要がある。2020年以降より民間医療機関に対応方針策定の促進が始まる。地域医療構想実現に向けた改革を支援するための地域医療介護総合確保基金は、医療と介護の総合連携強化を進めるために、弾力的運用が必要であり、更なる上積みが必要である。
 そして厚生労働省は2040年の医療提供体制を見据えた3つの改革、1.地域医療構想の実現に向けた取り組み(実現;2025年まで)、2.医療従事者の働き方改革(2024年から)、3.医師偏在対策(2036年まで)を三位一体で推進し総合的な医療提供体制改革を実施する。地域医療構想は対応方針の再検証を要請する公的医療機関が2019年9月26日に公表され、地域の状況や取り組み状況を無視した公表であり、その地域の住民は大きな不安を感じ、病院での風評被害が起こる結果となった。2020年は消費税を財源とし新たな病床のダウンサイジングが行なわれる。現時点では急性期病床の削減は数%に留まり、転換が進んでいない。トータルの病床数は横ばいである。地域医療構想会議で議論を深め地域の実情に関する意見を重視しながら、今後のあるべき姿に向け医療機能の見直しを行っていただきたい。医師の働き方改革は、2035年度末までに一般労働者と同様の水準までに労働時間を短縮することが目標であり、富山市医師会も対応を迫られる。医師偏在対策は2035年までに地域枠、地元枠の増員効果により都道府県における医師の需要均衡を達成する。この3つの改革が同時進行される。
 このような状況下、国民皆保険を堅持していくためにも、我々医療側から生涯保健事業の体系化による健康寿命の延伸など、過不足のない医療が提供できるよう適切な医療提供体制を提言し、時代に即した改革を進めていく必要がある。

2.保健、福祉との連携強化

 就労の問題、保険料の問題等介護保険を取り巻く環境は厳しさを増している。マンパワーの不足が言われている一方で、医療と介護の、また介護に携わる人たちの中での連携はいまだに十分とは言い難く、介護現場で何が行われているかを掌握できていない主治医が多い現状さえある。
 少子高齢化、長寿社会に向け、職種間の連携を推進し、医師をはじめとする介護提供者の側からも利用者の側からも、円滑で効率の良い運用を目指し、研修等を充実していきたい。

3.在宅医療と地域包括ケアシステムの推進

 地域包括ケアシステムの構築とは、可能な限り住み慣れた地域で安心して暮らせるまちづくりである。それには国の在宅医療連携拠点事業、在宅医療推進事業を基盤とした在宅医療体制構築、在宅医療推進、在宅医療介護連携推進、医療・介護関係者の研修、地域住民への啓発などが必要となる。富山市医師会はこれらを踏まえ、在宅医療と地域包括ケアシステムの推進の事業計画は下記のとおりとする。
①在宅医療の質向上のための医療職・多職種を対象とした研修会の開催
②医療・介護の情報共有化、普及を目指した事業の展開
 平成30年度に設置した、「医療・介護情報共有化普及・推進協議会」を通じて富山市と協議をしながらIT推進とこれに
 関連した事業を展開
③エリア会議による医療と介護のさらなる信頼関係の構築
④在宅医療・介護サービスの普及・啓発のための市民公開講座の開催
⑤在宅医療の環境整備および在宅医療を実施している会員への支援
富山市医師会としては、これらの事業を通じて在宅医療を行う上での環境整備とそれに関わる多職種の人材づくり、在宅医療連携拠点整備を行っていく。

4.危機管理意識の向上

 先のさまざまな災害を教訓にして、近年、医療の世界にも事業継続計画(BCP)の概念が持ち込まれ、すでに災害拠点病院においてはBCPの策定は必須事項となっており、一般病院においてもその策定を進めることを促されてきている。BCPは災害などの緊急時の事業継続のみならず、平常時に行なうべき活動の見直しにもつながるとされており、富山市医師会においてもその概念を取り入れて、会員および医師会組織自体の事業・資産の損害を最小限にとどめつつ、事業の継続あるいは早期復旧を可能とすることを目的とした「災害時行動指針」の策定や「大規模災害マニュアル」の改訂を計画している。
 令和元年度も富山県総合防災訓練などの日本医師会災害医療チーム(JMAT)派遣訓練やJMAT講習会、富山市総合防災訓練、原子力災害医療研修会などに医師や医師会職員が参加したが、これらの知識は幅広く会員で共有すべきと考えられるので、できるだけ多くの会員に参加していただく機会をつくり、また会報や講演会などを通じて、広報・周知していきたい。
 定期的に危機管理委員会を開催することにより、医師会組織のリスクマネジメントおよび医療安全対策の検討・改善に努め、その活動により医師会職員の危機管理意識の向上が図られてきているものと考えるが、終わりがあるものではないので、これからも富山市医師会交流発表会や医療安全管理セミナー、各種委員会などの開催を継続し、さらなる向上を図っていきたい。

5.行政との連携による乳幼児・学校保健活動の充実および小児領域の在宅医療整備への取り組み

 乳幼児の健康予防医学の充実の基本である予防接種の接種率の向上および現在任意で行っている予防接種の定期接種化に向けた啓発と、これに関わる接種後の疾病構造の変化や関連する市中感染症の流行状況などを行政と連携し、検証することで小児の健康維持推進に努めたい。また、定期接種化であっても国および自治体による積極的勧奨が差し控えられているHPVワクチンについては、全国的に対象年代の保護者に個別通知および啓発を行う取り組みがなされつつある。富山市医師会としても、会員にHPVワクチンについての情報共有を周知しながら定期接種対象年代の保護者への説明について協力していく。運動器検診への取り組み支援やすこやか検診によるこれまでの評価・結果およびすこやか相談事業の見直しへの協力など、これまで以上に充実した検診業務になるよう努めていく。
 ポストNICUや重症心身障害児などの小児医療的ケア・小児在宅医療問題については、富山市医師会小児医療的ケア・在宅医療問題検討会と乳幼児保健委員会が協力できる範囲内でこの問題を取り上げ、行政や富山医療圏の関連医療機関や地域医療連携医との協力を図るとともに、これにかかわる多職種連携のための啓発研修会を企画し、実施している。2019年度からは、富山県および富山市においても医療的ケア支援者養成研修会事業やコーディネーター養成研修会が開催され、富山県医師会と共にこれらに協力した活動を継続し、富山市から県内全域へ連携できる体制を推進していきたい。乳幼児期から医療的ケアを必要とする子どもたちが安心して成長・発達・生活していける医療・福祉・教育連携へ富山市医師会として具体的にできることを整理して解決できるようにしたい。
 3歳児健診における屈折機器を用いての他覚的な屈折検査の実施は、富山市では2019年度より対象者全員に導入された。弱視の率など検討していきたい。また色覚検査は富山県ではすべての学校で施行された。富山県教育委員会では養護教員の多忙なことを考慮し、毎年の色覚検査データの収集を行なわないとしているが、失われたデータは復活できないことから富山市において毎年データ収集を行うよう富山市教育委員会と相談したい。

6.特定健診・がん検診及び緑内障検診

 特定健診は第Ⅲ期3年目となる。特定健診に関しては詳細項目である眼底検査の受診率が今一つ伸びてこないが、スムースな運用を図り受診率アップに心掛けたい。富山市国民健康保険、協会けんぽを対象とした富山県糖尿病性腎症重症化予防推進事業が開始されたが、リストアップされた対象者に対する保健指導が効率的に行われ本事業が有益な結果を生むよう行政と協力の上取り組んでいきたい。後期高齢者健診における質問票がフレイルなどの高齢者の特性を把握する目的で15項目に変更されるが、システム変更を行い対応していく。富山市における特定健診の受診率は目標値の70%に比べいまだ低迷しているが、さらなる受診勧奨、休日健診の実施など市と協議の上、引き続き受診率アップに向けて努力したい。がん検診においては胃がん内視鏡検診の対象者が昨年度より50歳以上の隔年となったため受診者は減少したが、未受診者のさらなる掘り起しを図っていきたい。
 また、緑内障検診は受診率と診断精度の向上を目指したい。令和元年度の受診率は7.1%と昨年と同様に低い状況である。ポスターの掲示等で受診率の向上を目指したい。また光干渉断層計(OCT)検査は高い診断精度を有し導入を目指したいが、検査費用に見合わない。緑内障検診の住民への周知方法、OCT検査の必要性とその費用について富山市と協議したい。

7.スポーツ、運動器に関する啓発・検診

 スポーツは運動器の健康を保ち、また余暇を楽しむものとしては大きな意義を有するが、現在の少年スポーツを取り巻く環境は、決して楽観視できるものではない。
 近年のスポーツは、それをする楽しみより、出演料のいらないショービジネス的な要素が強くなり、健康よりショーとしての面白さ、近視眼的な技術の向上を目指す傾向が目に余る状況にある。オリンピックメダリストでさえ老後の姿がかえりみられることはわずかである。
 子供たちはローマの剣闘士ではなく、純真な心を持ち感化されやすい子供たちゆえに、スポーツを指導する際、何が必要で何が害になるのかを、タブーを取り払い社会全体の問題として考え直す必要があると思われる。スポーツ障害に関する講演会の充実と合わせ、様々な機会をとらえて、より積極的に提言していきたい。

8.病診連携の推進と勤務医労働環境の改善

 2017年(平成29年)3月に策定された「富山県地域医療構想」、および2018年(平成30年)3月に改定された新たな「富山県医療計画」の中で、各医療圏の実情を考慮した高度急性期から急性期、回復期、慢性期、在宅医療・介護に至る医療機能の分化と連携の推進、および地域包括ケアシステム構築への指針が示されている。この医療計画を推進する上で、医療連携に果たす富山市医師会の役割は極めて大きい。医療機能の分化と連携を円滑に推進するためには、病診連携による情報共有が極めて重要であり、富山市医師会は“たてやまネット”や医師会主催の地域連携の会などを通して連携のハブとしての役割を引き続き担っていきたい。
 医師の労働環境については、日本医師会の「医師の働き方検討委員会」で議論され、厚生労働省で検討中の「医師の時間外労働上限規制案」が2024年4月から適用されることから、富山県内においても医師の働き方改革を推進していかなければならない。また、令和2年度診療報酬改定の基本方針では、救急医療を中心とした「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」が重点課題に位置づけられた。救急医療に関して富山市では、一次救急を担う富山市・医師会急患センターと二次救急医療機関の連携が順調に進んでおり、急性期病院勤務医の負担軽減に大きく貢献している。しかし医師の過重労働を防ぐためには、救急医療以外にもタスクシフトや医療連携など様々な労働環境の改善が必要である。富山市医師会では、勤務医負担軽減について地域全体に共通する課題を検討し、働き方改革への施策を実施していきたい。また男女共同参画の観点から、女性勤務医師の労働環境改善と積極的な活躍を支援していきたい。

9.男女共同参画の推進

 医学部で学ぶ女子学生は多い年には4割を超え、医師に占める女性の割合はますます増加している。その中で女性医師が様々なライフイベントに対応しながらキャリア形成を諦めずに働き続けることができる環境は女性医師のみならず全ての医師にとって働きやすい環境であり、医師の働き方改革に果たす役割は大きいと考えられる。
 富山市医師会では、富山大学と富山県医師会に協力して、子育てしながらも継続してキャリアアップに努める若い医師たちに講演を依頼し、医学生や研修医を対象に身近なロールモデルとして活躍の様子を提示してきた。その講師を務めた医師のうち5人は平成31年に一新した富山大学附属病院の女性医師支援室の男女7人のメンバーとなっており、今後も引き続き連携して活動を続けていく予定である。
 女性医師がその能力を十分に発揮し、組織の意思決定を担う場においても重用される男女共同参画社会の実現はまた医療界の活性化にも繋がることと考える。富山県医師会と協力したこれらの活動を通して本会内部での男女共同参画への理解と意識の改革を進め、その活動においても女性医師が活躍できるような環境整備を通して、人材育成・活用につなげたい。

10.富山市・医師会急患センターの運営

 富山市・医師会急患センターは平成23年に新築移転以降受診者は増加し年間4万5千人前後で推移している。引き続き初期救急と二次救急医療機関の役割分担を図りながら救急医療体制の維持、運営に心掛けたい。喫緊の課題として受診者数の増加に伴う当直医の負担や疲弊、過労の問題がある。富山大学医師や勤務医の協力、また当センターの専属医師配置により当直回数が減り、負担は若干緩和されているものと思われるが、今後さらなる当直医の負担軽減、また行政の協力を得ながら深夜帯の不要な受診抑制に向けた啓発に努めていきたい。2024年より開始される医師の働き方改革にともない当直医の枠組みの大幅な変更が予想され、また夜勤主体の当センター職員の勤務状況も見直していかざるを得ない状況にある。それらを見据えながら柔軟に対応できるよう対処していきたい。
 新型肺炎が深刻化しているが、今後起こりうる新たな感染症なども含めセンターとしてすべき対応を常時見極めていきたい。令和2年度も救急医療合同会議を行う予定である。
 全国での夜間小児急患診療体制の整備については地域差があり、#8000番の導入後、軽症受診者のトリアージについて効果的に機能している地域もあると考えられている。現在、内科・外科同様、朝6時までの体制を維持し地域の小児時間外診療の根幹を担っている。平成6年度から平成31年度(令和元年度)までの小児科時間外の年間受診者数は平成6年度の年間約9千人から少子化にも関わらず受診者数は増加し、現在は年間1万5千人前後で推移している。夜間受診者数は一日平均30名前後で推移し、午前0時から午前6時までの平均受診者数は5名から6名である。このうち午前2時から午前6時までは1日平均1.9名であり、深夜帯に二次病院への紹介は月平均1.6人程度である。夜間受診者の80%は午前0時までに受診しているのが現状である。
 現在の小児科出向医師数はひと月に開業医が14名から15名で平均年齢が63歳を超えてきている。これに大学や基幹病院で二次、三次救急も担う医師が参加して体制の維持に努めている。出向医師の高齢化は深刻な問題であるが、可能な限り一次急患診療については今後もこの体制が維持できるように地域小児科医への協力を求めていくとともに、現在の実情に応じた一次小児救急診療が継続的に維持できる体制について再検討を行いたい。

11.富山市医師会健康管理センターの運営

 健診事業では、地域検診・職域検診・人間ドック・学童検診・富山市施設検診などを行っている。膨大な量の個人情報や種々のデータを扱っており、より一層安全なシステムの構築・運用を心掛けたい。
 従来の人間ドックに追加することができる種々の「オプション検査」を実施してきているが、平成29年より導入した「歯科・口腔がん検診」や「認知症検査」も順調に周知されてきている。今後も受診者の多様なニーズに対応できるようにオプション検査の充実を図りたい。また、医師ドックの便宜性や受診率の向上を目的に、「日曜ドック」を継続する予定である。健診精度のさらなる改善、健診受診者の満足度の向上と、会員の診療に寄与できる健診事業を行っていきたい。
 今後、各種医療器械やコンピューターシステムの更新や新規の購入を計画しているが、適切な財政計画のもと、健全な経営を行っていきたい。
 臨床検査事業としては、検査データの精度を担保しながら、現在、さらなる迅速化に向けて分注装置の更新や、老朽化した病理検査(染色装置・システム)更新に向けて検討を進めている。
 特定健診事業も第Ⅲ期を迎え順調に進んでいるが、毎年のように運用変更があるため、行政等との連携を図りながら進めていきたい。
 各医療機関においては、「診療工房」を用いて診療支援サポートや各種がん検診、地域医療連携ネットワークへの参画を推進していきたい。

12.看護専門学校の運営

 医療分野、福祉分野でより多くの看護職者が求められ、全国的に看護師養成の必要性が増大している。新たな看護専門学校も設立されてきているが、まだまだ看護師不足の状態である。
 景気の変動により看護職の希望数も影響を受ける傾向にあり、最近は、富山県も含め全国的に増加してきている。このような中、富山市医師会看護専門学校は、これまでの実績以上にその存在が重要視されている。准看護師課程の存続については、近年、一般社会人からの入学希望者が多数あり、今後も存続させる社会的使命があると考えて運営にあたっていきたい。平成29年4月からは総曲輪レガートスクエアに新築移転し、准看護学科の入学生を今までよりさらに10名増やし、定数通りの90名としている。そして、その多くを富山市医師会会員の先生方に還元できるよう配慮しており、その成果も認められている。少子化が進み、高校卒業の生徒数が減少しているが、入学生の確保のため、教職員による学校訪問、オープンキャンパス等を、今後も積極的に展開して、学生の確保に努めていきたい。最近は、労働者数の減少や社会環境の変化に伴い、急速に准看護学科の志願者数が減少してきている。今後は、入学者数の推移、県全体の状況を把握しながら、合理的な学級編制等を検討していく。
 准看護師資格取得者が看護師となるための養成機関は、県内では本校だけである。当看護学科の意義と責任は重大であり、今後もより一層充実したものにし、県内の看護師養成の担い手になっていきたい。

13.地域産業保健事業の運営

 当事業は、令和元年度同様に厚生労働省の委託を受けた富山産業保健総合支援センター(労働者健康安全機構)に協力する形で継続していく予定である。
 地域産業保健センター事業(対象:50名未満の事業場)・産業保健総合支援センター事業(対象:50名以上の事業場)・メンタルヘルス対策支援センター事業の3事業が一元化されたことによるワンストップ・サービスの提供に向けての体制づくりを継続しつつ、平成28年度から開始したストレスチェックに係る面接指導についても引き続き相談、対応していく。
 富山市医師会としてもこれまで同様に富山県医師会、富山労働基準監督署、富山産業保健総合支援センター、富山県労働基準協会、富山県社会保険労務士会、富山市医師会健康管理センター等と連携していく。また、過労死やメンタルヘルス不調が社会問題としてクローズアップされる中で、働き方改革実行計画を踏まえ、長時間労働者の健康確保対策やメンタルヘルス対策、治療と仕事の両立支援をより一層推進し、労働者の健康を守るためにサービスの充実を図りたい。

14.IT化の推進

 富山市医師会内では、健診システムの更新、施設検診・住民健診のシステム化の作業を進めている。
 また地域医療連携ネットワーク“たてやまネット”に関しては、富山市医師会会員を中心に富山医療圏の基幹病院との病診連携、富山市歯科医師会、富山市薬剤師会に加え健診機関との連携を強化している、富山市医師会を含め3健診センターの健診情報の共有が整備される予定である。
 これにより健診情報を会員医療機関における医療情報とリンクさせて受診者並びに市民の健康を会員と共に守って行く体制が準備される。受診者の同意を基に“かかりつけ医”機能が補完され、いずれはPHR・HERへの基礎的データとなる事も期待される。
 医療・介護連携に関して、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーションにもネットワークを拡充してきたが、その利用促進に向けた支援を続けたい。特に富山市南エリアでは医療・介護情報共有のモデルエリアを形成すべく、努力を続けている。
 “たてやまネット”上ではそれ以外に小児在宅診療情報共有システム、心筋梗塞データ収集システム、富山県医師会の脳卒中情報システムが運用されている。脳卒中情報システムについては県内19救急病院に加え、今年度から8回復期病院の参加も得て富山県内で発症する脳卒中急性期のデータに加えて、回復期の治療やリハビリに関してもデータ収集が行えるようになり、その運用を富山市医師会が担っている。

15.個人情報保護への対応

 富山市医師会は平成18年度に初めてプライバシーマークの認定を受け、2年毎に更新している。個人情報担当者会議は毎月開催し全体会議を年2回開催するとともに、全職員と富山市医師会役員全員が研修を受けている。
 令和2年度は更新年にあたり、令和元年度内に個人情報保護監査実施記録によりテーマに沿って外部監査が行われ、各部署の取り組み状況をそれぞれ精査し、令和2年6月の更新審査に対応できるよう準備している。
 令和元年7月に改正JIS法が施行され新JIS対応が必要となった。それに伴い、様式の変更及び新規程による運用を行っていく。
 個人情報に関する社会の要求は年々厳しくなっており、今後も全部門を挙げて更なる適正な対応に努めたい。