富山市医師会について

令和6年度(2024年度)富山市医師会事業計画

令和6年度富山市医師会事業計画

2024年1月1日午後4時10分頃、石川県羽咋郡志賀町で最大震度7を記録する地震(令和6年能登半島地震)が発生した。この地震により日本海沿岸各地に大津波警報や津波警報・注意報が発表されるとともに、富山市においても震度5強というこれまでに経験したことのない大きな揺れが観測された。富山市医師会では、発災直後から能登地域へのJMAT(日本医師会災害医療チーム)の派遣等を行ってきたところであるが、引き続き被災地の復興に向けた支援・協力に努めることが求められている。

さて、世界中を震撼させた新型コロナウイルス感染症は、3年以上もの長きにわたって大きな影響を及ぼしたが、我が国では2023年5月8日に「5類感染症」に移行されて以降、徐々に社会経済活動が正常化してきている。富山市医師会においても、コロナ禍にあって中止や縮小してきた各種研修会や行事を再開する等、会員医療機関に適時適切な情報提供を行うとともに、会員相互の交流機会の創出を図ってきた。

また、健康管理センターは、会員のための信頼される検査機関であるよう努めるとともに、健診業務の更なる充実を図る。看護専門学校では、地域や会員の先生方に必要とされる看護職者の養成に注力する。富山市・医師会急患センターは、2023年4月から24時までの診療時間としたが、富山医療圏における一次救急の役割をしっかりと果たすため、引き続き迅速かつ適切な診療体制を構築していく。

富山市医師会は、地域の医療・保健・福祉を守り支えることを医師会の責務と考え、以下の事業を行う。

1. 医療制度改革への監視と提言

2024年度の診療報酬改定は、2023年12月20日の予算大臣折衝を踏まえ、診療報酬全体では+0.88%となったが、うち看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種の賃金の上昇を実施していくための特例的対応等を除く医科分について、改定率は+0.52%(40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置分を含む)となった。富山市医師会としても、これらの改定が我々の日常の診療に及ぼす影響を十分に吟味し、今後の診療報酬改定に向けて会員からの意見を集約し、提言を行っていきたい。また、2024年4月から始まる第8次医療計画では、医師の働き方改革において医師の時間外労働の上限規制や改正感染症法に基づく医療措置協定締結作業が開始される。さらに、かかりつけ医機能が発揮される制度整備についても検討が進むと考えられる。一方で、医薬品や医療機器の供給の問題、物価・賃金の上昇や円安の進行等の経済的な要因、世界各地での紛争や大規模災害も、我々の医療に影響を与えている。そして医療分野にも人工知能(AI)等の導入が進み、医療におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)も進展すると予想される。我々医療者が不安なく診療することができ、市民の皆さまへ安心・安全でより質の高い医療を提供できるように、富山市医師会としても社会全体の監視を継続していきたい。

2. 危機管理体制の維持と充実

新型コロナウイルス感染症は5類感染症となり、パンデミックの危機は乗り越えたのも束の間、2024年元日に「令和6年能登半島地震」が発生し、今まで経験したことのない震度5強を体感した。津波の恐怖も含めて、改めて自然災害に対する備えの重要性が再認識された。

富山市医師会では地震・風水害等の大規模災害に対する事業継続計画(BCP)の策定・整備を行い、大規模災害マニュアルの見直し・改訂・充実を続けているが、全ての関係者への更なる周知を徹底する。2023年度は、富山市防災危機管理課による防災講演会を開催し、富山市総合防災訓練に富山市医師会JMATとして参加、応急救護所開設訓練を行った。引き続き行政との連携を図り、災害時の医療救護活動を行えるように備えていく。また、富山市感染症危機管理医師研修会をハイブリッド形式で開催したが、多数の参加者を得るために今後の開催形式は検討していく。富山市医師会職員に対する医療安全管理セミナーや交流発表会を継続し、各部門の連携強化、危機管理に対する意識の向上に努める。

3. 富山市・医師会急患センターの運営

2023年5月8日から新型コロナウイルス感染症は5類感染症となり、世の中の対応も大きく変化した。しかし感染症が終息したわけではなく、相変わらず流行を繰り返しており、当センターでは発熱患者への対応を重点とした診療体制を継続していく予定である。さて2023年度から当センターでは全科において24時で終了となった。それにともない深夜帯に軽症患者の二次輪番病院受診による混乱が指摘されたが、軽症での夜間受診はなるべく控えるよう、行政とともに市民への周知を図っていきたい。

また、2024年度から医師の働き方改革が実施され、医療界にとっても大きな変革期となる。現在当センターは、開業医に加えて多くの大学病院や勤務医の先生方のご協力のもとで成り立っているが、今後は勤務医の出向体制の見直しにより開業医の出向回数の若干の増加も予想され、その際は是非ともご理解、ご協力をお願いするところである。

2023年度は新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後、小児はコロナ禍において減少傾向にあった日常の感染症が増加し、休日夜間の時間外診療への受診者は新型コロナウイルス感染症流行以前の患者数へ戻りつつある。インフルエンザの流行は2023年の春以後、全国的に流行が終息しないまま年末の流行期に移行し、同時にコロナ感染症も5類移行後、数か月ごとに流行している状況等もあって、時間外における発熱患者への対応については、これまで通り繁忙期には2診体制としながら地域医療がひっ迫しないように努めてきた。また、小児の一次救急が24時までとなった2021年度から、深夜帯での診療については二次救急医療機関へ問い合わせいただく体制となったが、この24時までの夜間体制を可能な限り維持・継続できるように地域小児科医への協力を求めながら、一次小児救急診療についても継続と今後の実情に応じた臨機応変な体制維持に努めたい。

4. 病診連携の推進と勤務医労働環境の改善

現在の「富山県地域医療構想」および「富山県医療計画」の中で示されている、各医療圏の実情を考慮した高度急性期から急性期、回復期、慢性期、在宅医療・介護に至る医療機能の分化と連携の推進、および地域包括ケアシステムの構築にあたり、富山市医師会の果たすべき役割は極めて大きい。医療機能の分化と連携を円滑に推進するためには、病診連携による情報共有が大変重要であり、富山市医師会では「たてやまネット」等を通して連携のハブとしての役割を引き続き担っていきたい。

医師の労働環境については、医療法等の改正に基づく医師の時間外労働上限規制が2024年度から適用になり、富山県内においても医師の働き方改革を実践していかなければならない。また、2022年度診療報酬改定の基本方針では、救急医療を中心とした「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」が重点課題に位置づけられた。救急医療に関して富山市では、初期救急を担う富山市・医師会急患センターと二次救急医療機関の連携が順調に進んでおり、急性期病院勤務医の負担軽減に大きく貢献している。しかし医師の過重労働を防ぐためには、救急医療以外にもタスクシフトや医療連携等様々な労働環境の改善が必要である。富山市医師会では、勤務医負担軽減について地域全体に共通する課題を検討し、働き方改革への施策を実施していきたい。また男女共同参画の観点から、女性勤務医師の労働環境改善と積極的な活躍を支援していきたい。

5. 男女共同参画の推進

医師に占める女性の割合が増加する中、女性医師が様々なライフイベントに対応しながらキャリア形成を諦めず働き続けられる環境は、医師の働き方改革を進める上でも重要なことと考えられる。

女性医師の割合が高い富山大学では、子育てしながらも継続してキャリアアップに努める若い医師たちが、自ら話し合いルールを決め、時にはそれを医局のルールにも組み込んで男性医師も含めた医局全体の働き方改革に繋げて、男女問わず子育てをしながら働き、キャリア形成を継続している。医師のダイバーシティ推進室が中心となって研修医や医学生を対象に、身近なロールモデルとして女性医師たちの活躍の様子を毎年2回の講演会・座談会で発表しているが、この活動はこれから医療の現場に出ていく研修医や医学生において、男女共同参画への理解と意識の改革を進める一助になると考えられる。富山市医師会は、これからも富山大学や富山県医師会と協力しながら男女共同参画社会の実現に努め、女性医師が活躍できるような環境整備を通して、人材育成・活用につなげたい。

6. 在宅医療と地域包括ケアシステムの推進

地域包括ケアシステムの構築とは、可能な限り住み慣れた地域で安心して暮らせるまちづくりである。それには国の在宅医療連携拠点事業、在宅医療推進事業を基盤とした在宅医療体制構築、在宅医療推進、在宅医療介護連携推進、医療・介護関係者の研修、地域住民への啓発等が必要となる。富山市医師会はこれらを踏まえ、在宅医療と地域包括ケアシステムの推進の事業計画を下記のとおりとする。

①在宅医療の質向上のための医療職・多職種を対象とした研修会の開催

②エリア会議による医療と介護のさらなる信頼関係の構築

③在宅医療・介護サービスの普及・啓発のための市民公開講座の開催

④在宅医療の環境整備および在宅医療を実施している会員への支援

⑤市民を対象にしたアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を含めた死生学の啓発

富山市医師会としては、これらの事業を通じて在宅医療を行う上での環境整備とそれに関わる多職種の人材づくり、在宅医療連携拠点整備を行っていく。

7. 保健、福祉との連携強化

富山市の人口は、2010年をピークに減少に転じており2045年には2010年の4分の3程度まで減少すると予想されている。高齢化も深刻で、富山県の高齢化率は2022年の時点で33%となっており、既に3人に1人が高齢者となっている。保健、福祉に携わる人が減少している状況であり、これからは、健康寿命を伸ばし人口減少と高齢化への対応を早急に進めていく必要がある。富山市には富山市医師会在宅医療支援センターがあり、市民がセンターを積極的に利用することにより住み慣れた地域で自分らしく暮らしていく体制を作っている。また、地域内の医療機関、介護施設、地域包括支援センター等と連携し、地域包括ケアシステム構築に向けて、保健・福祉での地域住民の健康・公衆衛生を推進していく必要がある。保健、福祉分野での人材の確保と育成は、社会全体にとって喫緊の課題となっており地域ごとのニーズに応じ、柔軟で継続的な対策を検討し、従事者がやりがいを感じながら働ける環境を整えていきたい。

8. 行政との連携による乳幼児・学校保健活動の充実および小児領域の在宅医療整備への取り組み

乳幼児の健康予防医学の充実の基本である、予防接種の接種率向上および現在任意で行っている予防接種の定期接種化に向けた啓発と、これに関わる接種後の疾病構造の変化や関連する市中感染症の流行状況等を行政と連携し、検証することで小児の健康維持推進に努めたい。また、定期接種であっても、国および自治体による積極的勧奨が差し控えられていたHPVワクチンについては、現在定期接種として勧奨が再開され、差し控えられていた時期に接種の機会を逃した年代にはキャッチアップ接種として取り組みがなされていることから、富山市医師会としても会員にHPVワクチンについての情報を周知しながら、対象年代の保護者および接種対象者への情報提供を充実させたい。

学校保健活動については、これまでの運動器検診への取り組み支援やすこやか検診による評価・結果およびすこやか相談事業の見直しへの協力等、より一層充実した検診業務になるよう努めていく。

ポストNICUや重症心身障害児等の小児医療的ケア・小児在宅医療問題については、2021年9月より医療的ケア児支援法の施行がなされ、乳幼児保健委員会が協力できる範囲内でこの問題を取り上げ、行政や富山医療圏の関連医療機関や地域医療連携医との協力を図るとともに、2023年度には学校における医療的ケア児受け入れガイドラインの策定等に参画し、今後もその内容の検証や充実に努めたい。また、これに関わる多職種連携のための啓発研修会を企画・実施しており、今後も可能な範囲で継続していきたい。2019年度からは、富山県および富山市においても医療的ケア児支援者養成研修会事業やコーディネーター養成研修会が開催され、富山県医師会と共にこれらに協力した活動を継続し、富山市から県内全域へ連携できる体制を推進していきたい。乳幼児期から医療的ケアを必要とする子どもたちが安心して成長・発達・生活していける医療・福祉・教育連携へ、富山市医師会として具体的にできることを整理して解決できるようにしたい。

2019年度より富山市で開始された「屈折検査機器を用いての3歳児眼科健診」は、富山県全域に拡がった。その検査結果は受診早期に精密検査結果票を提出しなければならず、正確性に欠けていた。そこで富山市の協力を得て、受診半年後に精密検査結果票を提出するよう改善し、2024年度より正確な結果が出ると考えられる。富山市における弱視の正確な頻度を調査していきたい。

9. 特定健診・がん検診および緑内障検診

特定健診・保健指導は2008年より開始となり、2024年度から第Ⅳ期となる。今一度振り返ると、目前にあった高齢化社会や医療費の伸びに対応すべく、生活習慣病の源流であるメタボリックシンドロームに照準を合わせた健診システムである。健診・保健指導ともに国の目標値には至っていないが、各期ごとに検討が加えられ、質問事項の変更等のマイナーチェンジが行われてきた。またデータ活用の一環で、人工透析増加への対応として糖尿病性腎症重症化予防事業も開始された。2023年度から始まったマイナンバーカードによるオンラインサービスでは、前年度の特定健診のデータが閲覧できるようになった。2024年度は特に大きな変更点はないが、施策に準じて対応していきたい。2022年度から開始した「特定健診みなし健診」については、周知が十分とは言えず、柔軟に対応していきたい。

がん検診に関しては特に大きな変更点はない。コロナ禍で低下した各受診率も徐々に回復しつつあり、引き続きご協力をお願いしたい。

また、緑内障検診は受診率の向上と診断精度の向上を目指す。さらなる受診勧奨と高い診断精度を有する光干渉断層計(OCT)検査の導入と費用について、富山市と引き続き協議したい。また特定健診での眼底検査は詳細項目となっているが、眼底検査の対象でありながら眼底検査を受けた率は5.7%と低率であり、眼底検査の受診率が向上するよう検討したい。

10. スポーツ、運動器に関する啓発・検診

小児期からのスポーツと運動器に関する啓発・検診の取り組みを強化することで、市民の健康促進と疾患の早期発見・予防が期待できる。健康寿命の延伸に向けて健康な運動習慣を有する子どもの割合を増やすことで、健康で活力に満ちた長寿社会の実現につなげることが重要と思われる。それには、スポーツや運動を習慣的にしている子どもの割合を増加させていく必要がある。

健康長寿には、小児期からの観察・見守りが必要であり、骨・関節・神経・脊髄等の運動器を検診することで側彎症や姿勢不良、しゃがみ込みができない、体幹の前屈ができない・痛い等を早期に発見できるようになった。現在、学校定期健診に運動器検診の項目が加わっており、対象学年は小学校1年生~高等学校3年生までの全学年で行われている。学校医を中心とした運動器専門医が診察し問題を認めた子どもは、整形外科専門医による2次検診を受けることで早期の異常発見をすることが可能になっており、更なる運動器検診の受診を推奨したい。

11. 富山市医師会健康管理センターの運営

健診事業では、地域健診・職域健診・人間ドック・学校検診・富山市施設検診等を行っている。

2023年度には感染対策として中止していた受診者の食事提供サービスを再開すると共に、設備投資としてMRIの機器更新を行った。また、事業所の健診担当者を対象として産業保健担当者セミナーを3年振りに開催した。

2024年度には、健診利用者の多くを占める協会けんぽの健診コースにおいて、従来40歳・50歳限定で人間ドックと同等の内容を安価で付加できるコースがあったが、40~70歳の5歳刻みの節目年齢に拡充される。また、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い健診の受け入れ人数をコロナ前と同様の受診枠(午前中108名)に戻すと共に、新オプション検査として「経膣エコー」と「HPV検査」を開始する。

水道光熱費等の公共料金をはじめとする諸物価の上昇、最低賃金の引き上げ、社会保険適用拡大による人件費の増加、秋からの郵便料金の値上げ等、事業環境は大変厳しい状況であるが、健診精度の向上、受診者の満足度の向上、さらに富山市医師会員の診療に寄与できる健診事業を行っていきたい。

臨床検査事業は、2023年5月8日から新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したこともあり、PCR検査の受託は2022年度に比し約92%の減少となった。また、一般検体等受託検査においてもコロナ禍前には戻っていない状況が現在も続いている。しかも、昨年からの急激な為替変動やエネルギーコスト上昇による物価高は、医療機器・器材の安定供給等に深刻な影響を及ぼし、検査事業における固定費を増加させている。今後は検査部の運営を円滑に進めながら、業務効率化等も推進していくことが必要である。その上で精度管理を高い水準で維持し、会員の先生方へ、より正確なデータを提供することが最も重要だと考えている。

また、ここ数年で診療工房を使って電子カルテとの連携やオーダリング対応への要望が増してきており、数年後に控えている検査システムの更新時には、より多くのメーカーと連携対応できるシステムを構築し、参加施設全体が検査システムをより有用に活用できるよう準備していく必要がある。そして健康管理センターの特色を最大限に生かしながら、会員の共同利用施設として、かつ、地域住民の健康の維持・増進のために責務を果たしていきたい。

12. 看護専門学校の運営

富山市医師会看護専門学校の入学志望者は、少子化に伴い減少していくことを懸念していたが、コロナ禍や昨今の人材不足の影響により医療・介護従事者離れが進んでいるためか、予想をはるかに上回る勢いで減少している。しかしながら、高齢化社会により看護職者の需要増加、供給減少は続いており、看護師養成学校の必要性は、依然高いものと考えている。

当医師会看護専門学校は、(1)働きながら学ぶことができる定時制であること、(2)中学卒業以上の最終学歴で資格を取得できる准看護学科、さらに准看護師資格取得後、看護師国家資格を取得できる看護学科まで一貫した教育が受けられる県内唯一の学校であることがその大きな特徴であり、幅広い年代・学歴の方から、やり直し・学び直しの場として選択してもらえることが、存在意義の一つである。今後も准看護師課程を存続させることは当医師会の社会的使命であると考えて運営にあたっていきたい。

当校ではオープンキャンパスや学校訪問実施、TVコマーシャルやSNS等を活用し魅力を県民に広く周知するとともに、引き続き富山市医師会員が開設する施設従事者向けの推薦入試枠を設け、入学試験も前期・中期・後期と複数回開催するなどして、より多くの学生の確保を目指していきたい。

13. 地域産業保健事業の運営

富山地域産業保健センターは、厚生労働省の委託を受けた富山産業保健総合支援センター((独)労働者健康安全機構)に協力して事業を継続している。

産業医を選任する義務のない50名未満の事業場の労働者の健康を守るために、健康診断結果についての意見聴取(健康診断結果に基づく保健指導に関する事項や、健康診断結果の有所見者に対する就業上の措置)をはじめ、長時間労働者と高ストレス者に対する面接指導、個別訪問による産業保健指導(職場巡視)を実施してきた。2023年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、減少していた対面による面接や指導を流行前の件数に戻している。一時中断していた産業保健担当者健康セミナーも対面で再開した。これまでと同様に、富山県医師会・富山労働基準監督署・富山県労働基準協会・富山県社会保険労務士会・富山市医師会健康管理センター等と連携してサービスを提供していきたい。

14. IT化の推進

富山市医師会内では、健診システムの更新、施設検診・住民健診のシステム化の作業を進めている。

また地域医療連携ネットワーク「たてやまネット」に関しては、富山市医師会員を中心に富山医療圏の基幹病院との病診連携、富山市歯科医師会、富山市薬剤師会に加え健診機関との連携を強化している富山市医師会健康管理センターを含め3健診センターの健診情報の共有が整備される予定である。

これにより健診情報を会員医療機関における医療情報とリンクさせ、受診者並びに市民の健康を会員と共に守っていく体制が準備される。受診者の同意を基に「かかりつけ医」機能が補完され、いずれはPHR・EHRへの基礎的データとなることも期待される。

医療・介護連携に関して、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーションにもネットワークを拡充してきた。本来、介護分野におけるICT化は行政が主体となるべき分野であり、今後の市政の方向にもよるが、まずは医療情報共有の原点に立ち返って医療機関同士の診療情報の共有と利用促進に向けた支援を続けたい。

たてやまネット上では、それ以外に小児在宅診療情報共有システム、心筋梗塞データ収集システム、 富山県医師会の脳卒中情報システムが運用されている。脳卒中情報システムについては県内18救急病院と8回復期病院が参加しており、富山県内で発症する脳卒中急性期のデータに加えて、回復期の治療やリハビリに関してもデータ収集が行えるようになっており、今後もその運用を富山市医師会が担っていきたい。